手づかみの話。

おやつは、手で食べたい。



どんなに手が汚れようが

多少お皿がちらかろうが

行儀悪いと言われようが



手で食べるおやつは、断然おいしい。



ひとは第一印象で9割が決まる


なんて言われるけれど、よくよく考えてみたら

失礼しちゃうわ!って話よね(笑)

見た目だけで判断しないでよ、ってわたしなら言いたい。

きちんと時間をかけて向き合うからこそ

ほんとの姿が見えてくるもの。


パッと見、なんの変哲もない

地味で地味で地味なスコーンでも(失礼)

目にした瞬間 "第一印象" というものは必ず存在して

「ザクザクしてそう」「甘めな気がする」「ボリュームありそう」

とかなんとか、何かしらの想像が

むくむくむくむく膨らむ。



でもそれだけじゃ悲しきかな、わたしはまだ

その子のことを、なーんにも知らない。



「お待たせしました」



目の前に現れた粉のカタマリに触れる瞬間が

いちばんドキドキする。


初対面のひとに会うときみたいに、お互い探り探り。

……や、向こうは探ってないか(笑)


あ、どうもこんにちは。今日はよろしくお願いします。




フォークとナイフがあっても、見て見ないフリ。

問答無用で、手でつかむ。


指先で感じる、表面の質感や硬さ

持ち上げたときの重量感

じんわりと伝わってくる温度


ふたつに割ろうと、グッと親指を入れたときの

力点部分の沈み方

こめる力加減

中の生地の感触

香りの舞い上がり方


ぜんぶ、それぞれ、違う。


いざ、手に取ってかじろうものなら


噛む力の具合だって

くちびるに触れたときの温かさや柔らかさだって

指の間からスルスルとこぼれる粉の様子だって


フォークで口の中にダイレクトシュートしちゃったら

知らないまんま。

やだやだ、もったいない。



知ってる?

時間が経つにつれて、ぜんぶ、感じ方も変わる。


さっきより、しっとりしてきた

さっきより、香ばしい気がする

ちょ、わ、割れないんですけど……!

ええい、ひとくちでいってしまえ。



おちょぼ口でお上品に食べるのもいいけれど

手で豪快に頬張ったら

めいっぱい、目の前のお菓子を楽しめる気がして

めいっぱい、つくり手を知ることができる気がして



ああ、おいしい。






やっぱり、おやつは手で食べたい。

粉のカタマリ。

スコーンってほんと自由。 つくり手が「スコーン」と名付けてしまえば それがパンのようにふかふかであろうと クッキーのようにサクサクのぺったんこであろうと それは「スコーン」以外のなにものでもなくなるんだもの。 千差万別。 個性あふれる不思議な不思議な"粉のカタマリ"。 そこに込められた、店主のメッセージを 感じたい、伝えたい。

RIN

スコーンの人。
カフェエッセイの制作、ちょこっとライターもやってます。
スコーン求めて全国カフェ行脚。
ザクザク茶色い焼菓子とおいしいカレーが好き。