恋文04|adito アヂトの話。

「1年って早いねぇ。」

も、10回目をむかえた。



お盆やお正月には田舎に帰省する。

誰かに強制されるわけでもなく、日本国憲法で厳しく取り決められているわけでもないのに

子供のころからの習慣でそれが当たり前。

そういうもん。


もちろん、ご先祖様に挨拶して

親族で元気な顔を見せ合うって

ちゃんと意味があるのは知ってるよ。


でも一同集まって話すのは

「1年早いわねえ」って

毎年毎年、おんなじフレーズ。

毎年毎年、おんなじ思い出話(笑)



なのに、お盆やお正月が近づくにつれて

「今年はいつ帰ろう」って、勝手に思う。

そういうもん。






駒沢大学「adito(アヂト)」。


ここに”帰る”のは、ゴールデンウィーク。

すっかり体に染み付いてる。

4月末になると「今年はいつ帰ろう」って

ごくごく自然と足がむく。

そういうもん、になっている。





まいどおおきに。





隠れ家を象徴するような店名なのに

隠れるどころか、最大限にウェルカムなフレーズがアヂトの合言葉。

目の前は大きなバス通り。

住宅街にででんっと大きな一軒家が堂々とそびえ立つ。

2階は全面ガラス窓。しかも、全開。

みんなの帰りをどっしりと待ってくれているみたいで

その姿が見えて来ると、なんだか安心する。





出会いはもう10年近く前。

わたしも世の女子大生のご多分にもれず

“カフェ巡り”を始めたころ。


アヂトの人はみんな関西弁。

エプロンにバンダナ姿も、当時から変わらない。


いつだって、どこにだって

遊びゴコロとサービス精神でいっぱいのアヂト。

関西人の天性かしら(笑)





梅タルタル鶏唐揚丼、味噌バターそぼろ丼、アナゴとろろ山椒丼に豚ネギまみれ丼……。

看板メニューの「大人様定食」には

聞いたこともなくて、想像できそうでできない、でも

食欲をそそるメニューだらけ。

ボリュームも愛情もいっぱいの手作りごはん。

何に出会えるかはその日のお楽しみ。


街の定食屋さん的なものも常時オンメニュー。

豚角煮、ミックス焼きそば、だし巻き玉子、ぶり大根……

う、こっちも捨てがたい。




どんどんカフェが増える中で

体に染み付くほどアヂトに愛着を持ったのは

そんな楽しくてあったかいごはんはもとより、いろんな縁があった。


誕生日が近いとなんだか親近感わくじゃない?

地元が同じだと打ち解けるのも、わたしだけじゃないはず。


店長のゆかさんと関西弁で交わす会話やローカルすぎる地元トーク。

ひとり兵庫から上京していたわたしには恋しかったのかもしれない。

ホームシックだった自覚は全くないんだけどな……(笑)





実はアヂトで初めてスコーンを食べたのは、ほんのつい最近のこと。

出会ったころからずっとある、ほかほかスコーン。



ふかふか軽そうに見えて、手に持つとずっしりとした重量感。

「お腹いっぱい食べてや」


選べる”ヂャム”は6種類も。

「どれでも好きなもん選んでや。何回来ても楽しめるで」


“ヂャム”と一緒に添えられたあんことクリーム。

「あんこと粉もん、おいしいで!いろんな味で楽しんでや」


ニコイチの片方にはザラメ、片方には塩。

「違うもん同士も仲良くね」


ぎゅっと粉が集まったシンプルで直球のおいしさ。

「やっぱ関西人は粉もんやね」



想像以上に”アヂト”がめいっぱいつまったスコーン。

やっぱり遊びゴコロもサービス精神も

愛もいっぱい。


なんだかすごく嬉しくなった。

ああ、大好きなアヂトのおやつだ。






ゴールデンウィーク、アヂトへ帰る。

かならず、黄金習慣間限定の大人様ランチを食べる。

そんなサイクルができて、もう10年。



子供のころの夢と憧れがつまった、大人のためのお子様ランチ。

ハンバーグも唐揚げもエビフライも

タコさんウインナーもだし巻き玉子もポテトもぜーんぶ食べられる

夢のワンプレート。

小さな旗も欠かせない。


「今年もおいしできたから、はよ帰っておいでや。」

「よう帰ってきたね、お腹いっぱい食べや。」


ここに帰ってくるみんなのための

アヂト特製、おかえりごはん。





「1年って早いねぇ。」

来年、11回目もまた

いつもの言葉がかわせますように。




粉のカタマリ。

スコーンってほんと自由。 つくり手が「スコーン」と名付けてしまえば それがパンのようにふかふかであろうと クッキーのようにサクサクのぺったんこであろうと それは「スコーン」以外のなにものでもなくなるんだもの。 千差万別。 個性あふれる不思議な不思議な"粉のカタマリ"。 そこに込められた、店主のメッセージを 感じたい、伝えたい。

RIN

スコーンの人。
カフェエッセイの制作、ちょこっとライターもやってます。
スコーン求めて全国カフェ行脚。
ザクザク茶色い焼菓子とおいしいカレーが好き。