違いの話。


今日のスコーンはいつもよりちょっとこんがり焼けてる気がする。


今日のスコーンはこないだよりちょっとしっとりしてる気がする。






おんなじお店で、おんなじひとがつくる、おんなじお菓子なのに


そんな風に感じることがある。






今日の珈琲はいつもよりちょっとのどごしがいい気がする。


今日の珈琲はこないだよりちょっとまろやかな気がする。






おんなじお店で、おんなじひとが淹れる、おんなじ珈琲なのに


そんな風に感じることもある。






単なる気のせいかもしれないし


もしかしたら店主が意識的にそうしているのかもしれない。






どちらにせよ


わたしはそんな瞬間が、結構好きだったりする。











なんだか勝手に


ちょっとだけ


ほんとにちょっとだけ


「常連さん」気取りになれるから。











違いに気づくってことは


“いつもの”とか、”前の”、を知ってるってことで


どっかのCMじゃないけど


違いがわかるオンナ、ってやつ?(笑)









実は結構、おめでたいひとなのかも (笑)








もしかすると


店主からすればちょっと失礼な話なのかもしれない。






だって作ってる側はきっと


できるだけ変わらないおいしさを作らなきゃ


それが自分の味だって


必死で頑張ってくれてるんだと思うの。






やっぱりみんなプロだし


自分の表現したいものにきっと誇りをもってると思うから。












でも、いつ行っても「まったくおんなじ」なんて


ちょっと味気ないじゃない、なんて思ったりする。






わたしたちは


機械で作られたものでも


常に同じ環境に設定された工場内で作られたものでもなく


そのひとの手で、そのときに、作られたものや時間を


楽しみに来ているのだから。











ほんとは


”いつもの”も”前の”も、あってないようなもので


どんなお菓子も珈琲も紅茶も、そしてそこで過ごす時間も


ふたつとして、まったくおんなじものなんてない。







わたしの大好きな粉のカタマリ。もご多分に漏れず。


どんなに何度も通っているお店のものであっても


毎回毎回、一期一会なの。


毎回毎回、はじめまして、とバイバイ。








その日の天気や天候は言うまでもなく


おんなじ日のおんなじときに作られたものであっても


たった数秒かもしれないけど、整形される時間に差は出るし


丸められているあいだに手の温度だって変わる。


1ミリ違わずまったくおんなじカタチだなんてできないし


あらぬ方を向いて膨らむ暴れん坊もいれば


まっすぐ直立するお利口さんだっている。


天板のはしっこで焼くか真ん中で焼くか


焼きあがったあと何分たってるか……










嬉しいよね。


わたしたちお客さんのためを思って


たくさんたくさん考えて


たくさんたくさん、お店が頑張ってくれてること。








だからこそ、その場所に行くんでしょ。







単なる「おいしい」とか「静かな場所」とかじゃなくて


店主のそういう想いから生まれてくる


おいしさだったり時間、空間だったりを求めて


わたしたちはその場所に向かいたくなるんじゃないのかな。










だからちょっとくらい、違いがあるほうが


わたしは好き。









完璧とか正解があっての”間違い”じゃない。


そのときそのときの、一期一会の違い。









もしあまりにも変わりすぎたらびっくりするから


意図的に大幅シフトチェンジするときは


声を大にして教えてほしい気もするけど (笑)


でもまあ、それもおまかせ。










ほんとはいつも、ほんのちょっと違うのが当たり前。


とは言っても相手はプロだから


そうそう手の内を見せてはくれないけどね。







だからあくまで



違いがわかるヒト"ぶって"みたり


常連さんを"気取って"みたりするのが


ちょっぴり楽しいのかもしれない。







粉のカタマリ。

スコーンってほんと自由。 つくり手が「スコーン」と名付けてしまえば それがパンのようにふかふかであろうと クッキーのようにサクサクのぺったんこであろうと それは「スコーン」以外のなにものでもなくなるんだもの。 千差万別。 個性あふれる不思議な不思議な"粉のカタマリ"。 そこに込められた、店主のメッセージを 感じたい、伝えたい。

RIN

スコーンの人。
カフェエッセイの制作、ちょこっとライターもやってます。
スコーン求めて全国カフェ行脚。
ザクザク茶色い焼菓子とおいしいカレーが好き。