恋文02|オキーフの話。




何をきっかけにわたしはここを訪れたのか



定かな記憶が、まったくない。









スコーンがあると聞いて来た気もするし


そうじゃなかった気もする…。


SNSを見て、だった気もするし


そうじゃなかった気もする…。







「茨城の三春から


焼き菓子と珈琲のカフェが北千住にやってきたらしい」






風のうわさでなんとなく知って


「あ、うちから割と近いかも」


なんとなく思って


「とりあえず行ってみようかなあ」


で、


なんとなく訪れたのがはじまりだった









それくらい


『O’keeffe』さんとの出会いは


ある意味で自然だったのかもしれない。








今になってみれば、なんだけど。








それがこんなに北千住に通うようになるなんて


自分でも思いもよらなくて。








だって、北千住よ?


いえ、決して千住がうんぬんではなく(笑)











今まで一度も降りたことがなかった場所だし


ほかに特別


お気に入りの場所があるわけでも


ついでに立ち寄る場所があるわけでもない


ただほかと比べると、うちから割と近いだけ。


(いつも小旅行だからね)










それでも、しばらく経つと


どうにもこうにも








「あー、井上さんのつんつるてんに会いたい」









って衝動にかられる。









-------つんつるてん。






はじめてここを訪れたときから


わたしは井上さんの作る”粉のカタマリ”を


そう呼んでいる。








実は我ながら


なかなかのネーミングセンスだと思ってたりするんだけど(笑)


(誰もなにも言ってくれないので自分で言う)








ツヤツヤと輝きを放つ


こぶし大の大きな粉のカタマリは


例えるなら、たまごみたい。







マリービスケットくらいガッチリと分厚い表面は


粉でできた、たまごの殻。


そんな鉄壁の殻のおかげで


たっぷりの水分が保たれた、しっとりふかふかの粉。


まるで羽毛布団みたいに舌触りが優しくて


舌においしさが、ぴとーって、寄り添ってくる。










そんな”ふかふか”だけをキレイに食べてから





ポリポリポリポリ


ポリポリポリポリ







それこそマリービスケットみたいに


分厚い殻を


ひたすらに味わうのが、わたしのお決まり。







いちばん最後に


”底”を食べるクセが


本領を発揮するのが、井上さんのスコーン。







これまで出会ったことない


がっちり頑丈な殻が、めちゃくちゃ好き。









最初はね、すごく意外だった。






だって一見ものすごく穏やかで


それはそれはもう


ゆるすぎるんじゃないかと思うほど


ゆるい空気の井上さんなのに(笑)







こんな大きなスコーンや


ガッチリと力強いタルトを作るんだもの。







出会ったころはまだ


メニュー表もなく


(くらいだから、もちろん値段もわからない(笑))


おやつも


チーズケーキと、ガトーショコラと


タルトとスコーンだけだったし


なんなら、半分くらいはオープン時間になかったり して(笑)







いつも口頭で


値段と飲み物を説明してくれる井上さんがおもしろくて


なんかこっちまで


無意識のうちに張ってた気持ちが


ゆるゆるほぐれていく気がして。









そんな店主の人柄に惹かれてったのかもしれない。










北千住なんてちょっと辺鄙なところで


「男店主がひとり、珈琲と焼き菓子を出す店」


なんて聞くと








ともすれば


つんつるてんの殻みたいに


たいそう強面で、頑丈なバリア張った


気難しい店主なんじゃないかと思うかもしれないけど








中から顔を出すのは


ゆるゆる~っとした、


ゆるゆるゆるゆる~っとした


なんとも、人懐っこい店主なのだ。


(なのだ?)








ちっちゃい店内だから


できればおひとり様か、せいぜいふたりかなあ。







満席になったら


すぐテンパっちゃうからさ(笑)






そんな人間味いっぱいの店主を見てるだけでも


飽きなくて楽しいんだけどさ。


でもここに来たらやっぱり


井上さんと話がしたいんだよね。







なんか、ゆるゆる~って、なれるから。





粉のカタマリ。

スコーンってほんと自由。 つくり手が「スコーン」と名付けてしまえば それがパンのようにふかふかであろうと クッキーのようにサクサクのぺったんこであろうと それは「スコーン」以外のなにものでもなくなるんだもの。 千差万別。 個性あふれる不思議な不思議な"粉のカタマリ"。 そこに込められた、店主のメッセージを 感じたい、伝えたい。

RIN

スコーンの人。
カフェエッセイの制作、ちょこっとライターもやってます。
スコーン求めて全国カフェ行脚。
ザクザク茶色い焼菓子とおいしいカレーが好き。